2015年5月27日

担当大臣が語る「地方創生とは」/国を見直す最後の機会建設業の協力は不可欠/石破茂氏

石破茂地方創生担当大臣は、地方創生は「国家の持続力を維持する」ために成し遂げなければならないと断言する。これまで目をそらしてきた「不都合な真実」を正面から見据え、この国のあり方を問い直す最後の機会と危機感を募らせる。石破大臣に地方創生の理念などを聞いた。

--地方創生政策の基本理念などをお聞かせ願います
 「地方創生は、世界に先駆けて人口減少・超高齢化を迎えたわが国が国家として持続可能性を保持するために、やらなければならない政策です」
◆若者が去り、存続の危機
 「戦後、高度経済成長期の中、1955年(昭和30年)から1970年(昭和45年)までの15年間に、地方から東京などの大都市圏に約800万人の若者が移り住みました。その後、地方は過疎化し、高齢化が進みました。それから60年が経過し、都市圏に移動した若者たちは75歳以上になっていきます。これからは、大都市圏が急速に高齢化する中で、地方には若者がいなくなり、地方自治体として存続していくことが困難となる局面も現出するでしょう」
 「地方創生はまさに、このままいくと近い将来日本は立ちゆかなくなるのではないかという強い危機感に基づくもので、ピンチをチャンスに変えるものです」
 「いま、一時的には2020年の東京オリンピック開催を控え、お祭りの前みたいな華やかな明るい状況にあります。しかし、人口動態などを踏まえて冷静に考える時、25年には何が起こるのだろうか。私は、もしいま何もしなければ、“宴の後”みたいな荒涼とした光景が展開するのではないかといった懸念を持っています。こうした懸念を払拭するためにも、地方創生に取り組まなければなりません」
--高度経済成長期からわが国の産業構造も大きく変化しています。こうした中で、地方創生という従来と違う施策が展開されています。そこで、建設産業の果たすべき役割は
 「昭和40年代後半、地方の人口が増え、多くの地方が元気だった時期がありました。それは、公共事業と企業誘致という2本柱があったためです。戦災により破壊された社会資本の復興だけではなく、わが国の産業基盤を支える道路、下水道、港湾・空港、ニュータウンなどの新たな整備、家電や自動車を始めとする製造業の地方展開が進んだ時代でした」
 「いまやかつてのように、公共事業と企業誘致で地方の持続的な発展を維持することは財政上の側面からも困難な状況にあります。とはいえ、国土強靱化、防災対策、膨大な社会資本ストックの維持・修繕、さらに道路や鉄道などのミッシングリンクの解消などの公共事業は、継続して実施していきます」
◆まずは社会資本の修繕
 「こうした中で、建設産業が担うべき重要な分野は、まずは橋梁や道路などといった社会資本の維持・修繕ですね。これに加えて、コンパクトシティーやユニバーサルデザインの導入など、高齢化、人口動態の変化に対応した新たなまちづくりといった分野で、建設産業が果たすべき役割は大きいものがあると思います」
 「地域の建設業の方々は、農業などとも密接なかかわりを持っています。建設産業から農業、漁業、林業などの分野に進む道も考えられます。いずれにしろ、地方創生が本格化するにつれて、建設業の果たすべき役割、担う分野は、大きくなることはありますが、小さくなることはないでしょう」
--先ほども触れられましたが、大臣が以前からかかわられてきたバリアフリー、ユニバーサルデザインを導入したまちづくりも、地方創生の一翼を担う重要な施策となっています
 「私は、かつて衆議院運輸委員会で交通バリアフリー法の審議にかかわり、自民党内にバリアフリー推進議連、ユニバーサル社会推進議連をつくりました。その際、法案審議に関連し、羽田空港から品川プリンスホテルまで車いすで行くということを実体験しました。飛行機から車いすで降り立ち、ボーディングブリッジを渡り、京浜急行の電車に乗り、京急品川駅で降りて、そこから車いすで品川プリンスホテルまで行くというコースでした」
 「そこで、車いすでの移動にはさまざまなバリアが多いことを実感しました。それから十数年を経た現在、多少改善されているとはいえ、多くの都市はバリアだらけの状態のままです」
◆バリアフリー化を推進
 「これからの超高齢化社会にあって、大都市圏、地方を問わず、ユニバーサル化、バリアフリー化を積極的に推進する必要があります」
 「観光立国を目指し、海外から人を呼ぶためにも、国内観光を促すためにも、こうした取り組みは重要です」
 「地方創生の具体化を図る上で、大阪の高石市で進めている健やかで幸せと書く『健幸』のまちづくりは、大いに他の地域の参考になります。歩くことにより市民は健康になる。健康になると医療費も低減できるという観点から、市民にもっと歩くことを促し、歩行者が自由に歩けるようなまちづくりを進めています。車道の幅を狭くし、歩道の幅を広くするということも実施し、希望者には万歩計を与えて、その歩数や健康診断の受診などに応じて、『健幸ポイント』を付与しています。そのポイントは共通商品券などと交換できます」
 「超高齢化社会を迎える日本は、いまこそ、サービス産業、観光、医療・介護のあり方を変えていかなければいけません。その具体化を図るためにも、各地方におけるバリアフリー、ユニバーサルデザインを基本とするまちづくりが重要な施策の1つとなるでしょう」
--高度経済成長期の地方から大都市圏へといった流れと逆に、大都市圏から地方へといった流れもあるようですが
 「内閣府の調査によれば、東京在住の50代男性の5割、女性の3割、60代男性・女性の3割が地方での居住を希望しています」
◆地方移住希望者を後押し
 「こうした流れはまだまだ本格的な動きとなってはいませんが、それを促す施策展開は進めています。施策の柱となるのは、米国で展開されているCCRC(Continuing Care Retirement Community)という共同体の日本版です。近い将来、CCRC構想の日本版が、本格的に動き出します」
 「CCRCは、高齢者が移り住み、健康な時から介護・医療が必要となる時期まで継続的なケアや生活支援サービスなどを受けながら生涯学習や社会活動などに参加する共同体です」
 「こうしたコミュニティーを構築し、東京在住の50代、60代の方の移住を促し、第二の人生を地方で送っていただくことも実現していく必要があります」
 「いずれにしても、これまで“不都合な真実”として目をそらしてきたものを正面から見据えて、国家の持続力を維持するために地方創生、ひいては日本創生を成し遂げる、という目標を持って、日本全国の自治体が立ち上がるときです」
 「いまが、この国のあり方を問い直す最後の機会です。そのためにも、広く建設産業の方々の協力をお願いします」