2014年4月24日

日本建設技術社長 原 裕氏に聞く


【事業着手前に温暖化の影響考慮/環境面優先しなければ手遅れに】
 地すべり防止や斜面・法面の安定化、環境分野に高い技術力を持つ佐賀県唐津市の日本建設技術。近年は異常気象による自然災害も多発しており、「地球温暖化に対処するため、建設業界にできることを提案している」と話す原裕社長に、斜面防災の現状や環境にやさしい技術、人材育成の方法などを聞いた。



--インフラクライシスを突破するための国土強靭化をどう考えているか

 社会インフラの老朽化に伴い、メンテナンスの時代と言われ、トンネルや橋、下水道の補修は行われているが、地すべりや斜面防災の補修・補強工事の予算については、まだまだ少なく、これらも危険な状況になっていて、長寿命化が必要だ。国の2014年度予算で防災・安全交付金が1兆0841億円に増額されたが、佐賀県は交付金を要望していない。県に計画書を示して働きかけたい。佐賀県で予算化されれば、他の県にも波及していくだろう。

--インフラの老朽化に加え、多発する自然災害に対する備えは

 地球上では現在、年間約72億tのCO2が人為的に排出されている。このうち、植物や海洋、山林などには約43%しか吸収されず、約41億tが大気中に蓄積され、増え続けている。日本では、平均気温が1800年代後半に比べて2-3度上がっている。今世紀末にはさらに6.4度上がると予測されている。この温暖化の影響と見られているのが近年の自然災害だ。年間降雨量は変わらないのに、ゲリラ豪雨が多発し、洪水被害が拡大している。冬季のドカ雪による被害も大きい。
 世界的には、氷河が溶け始めている。これに伴う海面の上昇が懸念されており、有明海でも海面が2.5m上昇すると予測する学識者がいる。温暖化が進めば、地すべりや斜面の災害、河川の堤防決壊が多くなる。事業着手の前に、地震や温暖化の影響を考慮した計画を立てる必要がある。

--具体的な対応は

 従来の品質とコストに加え、環境面を考慮する必要がある。コストは多少高くはなるが、早く手を打たないと取り返しのつかない状況になる。東北地方では、津波に備えて海岸沿いに堤防を建設する案が景観を損なうとして反対されている。そこで『緑の防潮堤』を減災施設にすると閣議決定されている。2m盛土して植栽を施す計画がなされており、そこに遊歩道や憩いの場をつくることで人が集まれば、堤防建設が緑になり、温暖化の抑制と景観向上に寄与できる。ミラクルソル工法を始め、ダムや道路のモルタル吹付斜面を緑化して太陽光の反射を防ぐ技術を持っており、十分対応できる。

--高い技術力を維持する人材育成については

 安倍政権に変わって予算が増え、全国的に人材が足りないのが実情だ。中途採用して増やしているが、追いつかない。他産業は非正規雇用で対応できるが、建設業は正社員しか現場には出せない。一方、学生は建設系の学科を卒業しても他の業界に就職している。今後は産学官と政治が連携しないと若年者雇用は難しい。

--具体的な連携方法は

 例えば学生に半年間インターンシップで働いてもらい、大学が単位を認定する方法などがある。企業は魅力ある会社に成長しないと入職しないので努力する。うまく相乗効果が出れば、建設系の学生は建設業に入職するようになる。ただ、建設事業費が減らされると企業も継続して雇用できないので、最低限、現在の予算規模を確保してもらいたい。産学官と政治が一体となるのが必要だ。

--魅力ある会社にするには

 中小企業では、社長の夢が会社の方向性を示すバロメーターになる。何事も社長が率先してやり、仕事に対する意気込みを見せることが大事だ。それを社員が評価してくれる。当社では、毎年新年に新しい目標を3つ立てる。このうち、2つ達成できれば社員はついてきてくれる。社員にできないことを社長がやることも重要だ。社員全員が同じ目的に向かうのは困難だが、不可能ではない。