2013年11月19日

変化に強く-危機時の事業継続(上)

【経営戦略もとに計画づくり/災害本部に情報処理専門部署を】
 東日本大震災以降、「レジリエンス」「国土の強靱化」という言葉とともに、国や企業の災害への備えの重要性を説く声が高まっている。自然災害だけでなくアルジェリアでのテロ事件では海外で事業展開することに伴うリスクに対する認識も広がった。求められているのは、あらゆる危機(事象)に対応できるという国や企業の強さである。保険仲介とリスクアドバイザリー事業の世界的リーディングカンパニー、マーシュブローカージャパンが示す考え方を基に、企業における事業継続計画(BCP)やリスクへの対処のあり方を探った。



 内閣府の調査によると、日本の大企業の72%がBCPを策定済みか策定中(2011年11月調査)という。中堅企業を含めても49.0%に上り、企業におけるBCP策定は確実に広がっている。一方で「BCPを策定しただけではだめ」と各方面の識者が指摘しているのも事実である。事業継続で本当に求められる企業の対応力、回復力とは何か。
 内閣府は8月、企業によるBCP策定の指針である『事業継続ガイドライン』の改定版(第3版)を発表した。「あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応」を副題とした今回の改定の最大の特徴は、「戦略」という考え方が明示されたことだ。
 BCPでは、企業にとって重要な製品やサービス、リソース(人・もの・情報)を決め、それが被害を受けた際に、製品の提供や組織の活動を継続する方法、目標時間までに早期復旧する方法を示す。重要な機能は、企業の中期計画など経営のグランドデザインに基づいて決まる。例えば「今は開発段階で市場の売り上げは小さいが、将来、重要製品として打ち出すという経営戦略上の製品については、BCPで重要機能に位置付ける」(小森園孝輔シニアコンサルタント)ことになる。
 仮に企業経営の最重要機能であるにもかかわらず、危機後の復旧が難しいことも予想される場合には、代替拠点を事前に用意するといった対応が考えられる。あるいは、「将来的に閉鎖を考えている事業所が被災した場合、事業所を元どおりにするのではなく、次の事業展開の礎にしたり、予定より早い閉鎖をBCPで考えることもある」(今野裕規コンサルタント)。
 その目的とするところは、「危機による事業のマイナスの影響を少しでも小さくし、マイナスをプラスに持って行く取り組みだ」と今野氏は強調する。災害などの危機が発生しても、経営の目標を可能な限り達成するための方策を示すのがBCPということになる。
 何より災害など危機発生時には、企業の「対応力」が問われる。これを決定付けるのは「情報」だ。危機時に起こりがちなのが、被災個所や被害程度をすべて意思決定者に伝えようとすること。ところが今野氏は「被災個所などは『情報』ではなく、『データ』だ」という。
 災害などが発生した場合、実際には、情報が限られていることが多い。意思決定者が必要なのは、被災した道路の個所といったデータではなく、「どのルートなら、救援に行けるのか」という『情報』であり、データを現場から集め処理し、判断ができる『情報』に整えることが特に重要になる。
 災害時には、「災害対策本部を設置する企業が多いが、データを処理して情報にする専門組織を本部に設置することを決めている企業は、多くない」(今野氏)という。迅速かつ柔軟な「対応力」のある組織たるためには、事象発生時に情報を整理する専門部署の設置をあらかじめ決めておくことが求められる。
 その上で、「事象発生後、誰が、何の情報を、どこから、どうやって、何のために集めるかを事前に決め、どの情報を基に必要な行動を実行するかという基準をルール化し、組織としての認識を1つにすることで意思決定が促進される」(同)。
 なかでもルールの決め方が重要で、「すべての情報を本社に報告して判断を求めるのは現実的ではない。危機時の意思決定者に経営者が権限を委譲し、こういう状況なら現場で判断して本社には事後報告で良いという風にならなければ、対応力は高くならない」(小森園氏)。事前に想定して対策を決めておき、いわば「自動的」に現場が動けるようにしておくことが肝要というわけだ。