2013年11月14日

変化に強く-危機時の事業継続(下)


【訓練内容確認し対応力検証/帰宅困難者対策で建設業に熱視線】
 今後のBCP(事業継続計画)においては、経営計画を基にした危機時の体制づくりが求められる。この計画を作成するためには、社内の一部署だけでなく、「経営者も交えた社内横断的な議論」(マーシュブローカージャパンの今野裕規コンサルタント)が不可欠で、普段から企業内で議論することが、状況の変化に対応できる人材の育成にもつながる。「特定のリーダーがいなくても柔軟に対応できる人材がいる組織が『危機に強い組織』と言えるだろう」という。

 災害などの危機発生時に、情報収集とともに重要になるのが、「社外への広報」である。自社の危機時に提供可能な製品やサービスは何かという情報が、ステークホルダーの事業継続のためには必要なことであり、情報が入ってこなければ次の対応が決められない。こうしたサプライチェーンを守るために「広報が非常に重要になる」とも指摘する。
 実際に危機が発生し、緊急対応後の事業継続・復旧の段階に入れば、「BCPで示していた想定どおりに物事が進んでいるか確認し、ギャップがあれば、それを修正する」(小森園孝輔シニコンサルタント)。ギャップの修正こそが、「(企業の)柔軟性」が問われる場面だ。
 今野氏は「建設会社は、普段から発注者、協力会社など多くのステークホルダーとかかわりながら仕事し、予測が難しい自然も相手にしている。だから建設業は、普段から自ずと柔軟性と適応性を醸成しており、危機に強い企業としての素地が備わっている」と認める。建設会社におけるBCPでは、施工中物件での事業継続とともに、施工済み物件への対応や災害現場の復旧工事への対応を定めておく必要がある。事前に物件(施工中・施工済み)のリスト、状況確認の優先順位付け、確認の訓練が必要で、被害確認をする人員、対応する人員のリストと連絡先なども必要だ。「特に、被害確認や災害復旧の優先順位付けなどは経営者の意見を整理しておくことが重要」と今野氏は話す。
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 いま、帰宅困難者の一時受け入れがビル管理者などに求められている中で、特に建設業に対して期待されているのが、建物の安全性の確認や電気供給状況の点検といわれる。そのビルに滞在できるのか、帰宅困難者を受け入れて良いのかなど、ビル管理者やテナントの災害時の判断に影響を与えるためで、今野氏は「非常時にビル管理者自身で、建物の状況を応急的にチェックできるような『チェックリスト』の作成が検討されている」とし、ビル管理者と建設会社が相談して保守点検のチェックリストを作成しておくことで、「ビル管理者と建設会社の間で、非常時の役割分担ができる」とも。非常時の対応における建設会社の負担軽減にもつながり、建設会社の非常時の行動の優先順位も変わってくる。
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 そしてBCPはいま、新たな段階に入ろうとしている。欧米で重要視され始めているのが「事業継続のための訓練の内容」(今野氏)だという。日本の企業が実施している訓練で最も多いのは、「安否確認」と「避難訓練」「通信訓練」という防災訓練だ。これらも重要だが、「情報収集から、情報処理、意思決定まで含め、特定のシナリオを設定し、経営者も交えてシミュレーションするような、『演習』がBCPの実行には必要になる」とした。
 ステークホルダーが実施している訓練内容を確認して、災害など危機発生時の対応力を検証することが欧米では多いという。極端に言えばBCPがなくても、非常時に動けるルールや体制、人がいれば事業継続が可能であり、今後は「トレーニングを通した事業継続力の向上が企業に求められるのではないか」と同氏は予測する。BCPの有無だけでなく、『動ける力』を養うことが、国家のレジリエンシーにつながると言えそうだ。     (竹本啓吾)