2013年9月30日

そもそもレジリエンスとは何か マーシュブローカージャパン代表取締役会長の平賀 暁氏

世界を震撼させた東日本大震災。自然災害の脅威を改めて突きつけ、世界はリスクが発生した時の対応力の重要性を再認識した。世界経済フォーラムは、『グローバルリスク報告書2012年版』で東日本大震災を特集、2大陸以上にまたがるグローバルなリスクに警鐘を鳴らし、備えの重要性を説いた。
 『同2013年版』ではグローバルリスクへの国家の弾力性を測る手法の試作版を公表した。この間、リスクへの備えと対応、復活を総合した言葉として「レジリエンス」が世界的に広がり、わが国でも「ナショナル・レジリエンス懇談会」で国家のレジリエンス向上に向けた議論が始まっている。
 そもそもレジリエンスとは何か。その向上には何が求められているのか。企業がリスクに対処し、適切な復活力を保つために必要なことは何か。世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書の作成に携わるマーシュブローカージャパンの平賀暁代表取締役会長にインタビューし国家と企業のレジリエンス向上のあり方を聞いた。



 「強靱性、弾力性や復元力、復活力などさまざまな言葉が出されているが、明確な日本語訳はまだ存在していない。『グローバルリスク報告書2013年版』では、国というマクロシステムを5つのサブシステムが支え、そのサブシステムが堅牢性、冗長性、臨機応変性、対応力、回復力の5つで構成しているという枠組みを示した」

--13年版の報告書では、「国家の弾力性」を測定する方法を試作版として提示している

 「枠組みの中のそれぞれの構成要素がどれくらいの能力があるかを評価することで、国全体の強靱性を測れるだろう。ただ評価を定量化する形にはなっていない。グローバルに影響を与えるリスクが起きると、被害が甚大なことは明確だが、その程度を定量的に正確に把握することにどれほど意味があるか。複数の評価項目で定性的かつ、半定量的に指数化することで、より適正な評価が可能ではないか。この結果を踏まえ、項目をチェックすることで、リスクを軽減できるようになるのではないか」

--世界経済フォーラムでは、国家の競争力を評価したものを提示している


 「国家の競争力とレジリエンスでは、評価する項目が異なる点がある。競争力の評価項目から、レジリエンスの評価に合う項目を抽出したり、12年に政策投資銀行が提示した防災会計融資のチェックリストも評価方法の1つに組み込まれるのではないか」

--災害が起きた時に、その状態をベースとして新たな社会をつくるという「臨機応変性」が構成要素に入っているのが特徴的だ
 「リスクは多様で、さまざまなリスクに対応する能力、柔軟に対応する能力がなければレジリエンスにはならない。可能な限り事前に想定することが大事だ。地震や洪水にテーマを絞ると臨機応変性や適応能力、対応能力が問われず、被害の規模に論点が集中してしまう。地震が起きて、ものが壊れたからどうしようではなく、地震を起点として、さまざまなリスクが呼び込まれる。これをどの程度まで想定できるか。可能な限り羅列し、それに対する策を具体的に講じなければならない」

--レジリエンスの測定方法ができれば、その評価をいかに上げるかという検討ができ、国家のレジリエンス向上に役立つ
 「検討のスタートは切りやすいだろう。東日本大震災では、自治体レベルでの即時的対応力はかなり評価された。一方で、政府の対応能力、特に原子力発電所の問題での対応力の評価は低かった。だが、評価の結果が重要なのではなく、評価が低くても、高くても、何をしなければならないかが重要だ。危機時の体制と体制の統治者を決め、伝達手法と権限委譲のあり方を具体的に決めることがポイントだ。国家のレジリエンスを高めるためには、指示の発信元が強いリーダー性を持って取り組まなければならない。東日本大震災の時は、指示の権限を東北地方整備局長に委譲したことが効を奏した。これは危機時の一つの対応のモデルになるだろう。だが、次の地震でも地方整備局長に権限を委譲すれば良いかというとそうではない。指揮者と現場のコミュニケーションがうまく取れなければ成功しない。権限を委譲された指揮者に強い意志と実行力があるかどうかが問題になる」

--そうした対応力を上げるためにはどうすれば良いか

 「意識の高い企業では、年2度、事業継続を想定した演習をしている。社長以下、全役員が参加して、特定のシナリオを設定し、その上で想定訓練をする。政府でもシナリオづくりと、訓練をした方が良い。しかも避難訓練だけではなく、どのように国家の機能を回復するかというところまで。政府でもやっているだろうが、より広く開示した方が良いのではないか」

--国家のレジリエンスと企業のレジリエンスの違いは

 「基本的には同じだろう。レジリエンスの評価の測定法で示した枠組みの中に企業も包含される。国は大枠の施策を提示し、自治体や企業がより具体的な施策に取り組むというイメージだろう。国はすべての構成要素について考える必要があるが、企業では重要度の低い構成要素もある」