2013年8月12日

道路インフラには優秀な点検・診断技術者が不可欠 東京都市大学副学長 三木千壽教授に聞く

わが国は、世界に誇るべき建設技術により、厳しい自然条件や構造物が密集する都市の中で、道路を構築してきた。一方、そうして蓄積された道路構造物の劣化対策については、推進体制の確立と技術開発が急務となっている。そこで、道路インフラと向き合うに当たっての課題や展望を、東京都市大学副学長の三木千壽教授に聞いた。
--全国に道路橋は70万橋、道路トンネルは1万本以上あるとされる。落橋や天井崩落などが起き老朽化が問題になっている
 「この問題について、わたしは人間の老衰に当たる老朽化という言葉ではなく、劣化という言葉を使っている。生活習慣病のようなもので、できるだけ早期に発見して治療することで、寿命は長くなる。そのためには、点検と診断が最も重要であり、人間ドックでいえば検査技師だけでなく総合医・専門医に当たる優秀な技術者の育成が重要だ」
--道路橋の16%、道路トンネルの18%が建設後50年を迎え、20年後には橋梁の65%、トンネルの47%に及ぶとのデータもある。技術者が不足するのでは
 「50年というのは財産管理上の数字であって物理的な寿命ではない。建設後50年が経過し、首都高速道路や東名高速道路のように使われ方が激しくても、適切な措置によりさらに100年使える。建設コストや工事中の渋滞・通行止めに伴うソーシャルロスが低い場合は、架け替えも選択肢になるだろう。点検と診断に必要な技術者は、鋼橋であれば全国に50チームほどで足りるのではないか」
--国土交通省は、ことしを「社会資本メンテナンス元年」と位置付け、構造物の点検・診断・措置に、重点的に取り組む方針を打ち出した

 「劣化対策に本腰を入れたことは、歓迎したい。ただ、従来できなかったことに取り組んでほしい。例えば、『道路橋示方書』の2012年改訂には、維持管理の確実性や容易さを考慮した疲労設計の考え方が盛り込まれたが、肝心な設計上想定する供用期間に当たる数値が盛り込まれていない。体制づくりも不十分だ。ほかにも、危険個所に対する年度途中での予算措置などが挙げられるが、特に強調したいのは、優秀なベテラン技術者に点検・診断を担ってもらうための仕組みづくりだ」
--具体的には
 「業者選定において、技術力を評価することが重要だ。発注者・監督者にも、提案された対策の要・不要を見極める力が求められる。また、適正対価を支払うことが重要だ。劣化を見過ごせば、工事が大掛かりになり、数億円以上の工事費と、直接工事費の10―20倍のソーシャルロス、現場によっては新たな用地費なども発生するが、たとえば鋼橋であれば小さなクラックを発見しグラインダーで削るなどの早期治療により、数十万円のコストで対策を打てる。そのコスト低減効果を考慮した対価にするべきだ。数人のチームを引き連れた点検・診断で1橋当たり数十万円(の発注ロット)では、マーケットとして成立しないのではないか」
--構造物の維持管理には、センシング技術など、新たな技術の開発・導入も期待されている。
 「MEMS(微小電気機械素子)などのセンサーを生かした構造物のモニタリング技術は、橋梁などにセンサーを取り付けて、ひずみ、振動、傾斜などのデータを取り続けことができる。数年に一度の点検サイクルに対し、現在のバッテリー寿命は短いが、太陽光発電や振動発電などの自立電源の活用も考えられる。人間のように気になった個所を詳しく調べるといったことはできないため、優秀な点検技術者を育成する必要があることには変わりないが、新技術を手探傷と組み合わせたり、人による点検が困難な場所で活用することで、メンテナンスレベルが上がることに期待する」