2013年7月31日

インフラの信頼性高めよ 奥村誠東北大災害科学国際研究所教授に聞く

東日本大震災で大きな被害を受けた東北6県ではハード面でどのように取り組むのか。奥村誠東北大災害科学国際研究所教授に「レジリエンス」の概念などを聞くとともに、6県の県土整備関連部長にそれぞれの強靭化施策を紹介してもらった。
--レジリエンスの概念とは
 「地震や津波、台風などによる災害が起こることによって、社会経済活動のレベルが落ち込み、日ごろから行っている活動ができなくなる。この落ち込んだところから、災害前の状態に回復させるが、その間の社会的ロス(左図の三角形)を小さくすることがレジリエンスと言われている」
 「従来の防災の概念は、落ち込み度合いをいかに小さくするかに重点を置き、しっかりした防潮堤や壊れない住宅をつくろうという考えだ。この概念は小さな災害には有効であるが、大規模な災害において人命を完全に守り、まったく壊れないものをつくるのは難しい。一方、レジリエンスは一定の被害は受容しながらも、早く回復することで社会的ロスを小さくする考え方だ」
--回復性を高めるには
 「当然のことながら、落ち込みが小さければ回復も早い。落ち込みの大きさは、自然の外力の大きさと暴露の量、脆弱性の3つの要素のかけ算で決まる。自然の外力は人間ではコントロールできないので、暴露の量と脆弱性を下げる戦略がある」
 「脆弱性を下げる手法の第一は、しっかりした社会資本や住宅をつくるという従来の防災対策だ。ただ、この手法はコストや時間、土地などが掛かる。人口や資産が右肩上がりに増えていた時代はペイできたが、今後、人口が減り、すでにある資産を大事に使っていかざるを得ない状況においては、対策が講じられる範囲に限りがある」
 「また、外力に耐えるものづくりを行うという対応になるため、設計のための想定が必要だ。その結果、想定内の被害を小さくすることはできるが、東日本大震災のような想定を超えた災害には十分に対応できないという問題が残る」
 「第2の暴露を下げる対策としては、津波浸水区域や河川氾濫区域、崖崩れが起きそうなところには住まわせないといった土地利用対策が考えられる。人口減少が進む地域では有効になる対策だ」
 「一方、落ち込みからの回復を早める対策としては、1カ所が壊れてもほかのところで事業が継続できるようにする多重化や備蓄、保険などがある。これらは残念ながらいずれもコスト高になる」
--想定を超えた災害にどう向き合うべきか
 「まさにその部分がわれわれに突き付けられており、研究を進めていくべき課題だ。想定を超えた不確実な事象への対応としては、『どんなことが起きそうなのか』をできるだけ広く想像して、不意打ちを避けることが重要だ。そのためには、例えば地質調査などを行い、数千年、数万年前までさかのぼって調べたり、調査範囲を世界全体に広げたりすべきだ」
 「早めのアラームで体制をつくる時間を稼ぐことも必要だ。想定を超えたことが起きても、何が起きたかを早く伝える仕組みがあれば身構えることができる」
 「対応の種類をできるだけ少なくし、人々を迷わせないことも重要だ。災害には地震、津波、火災、水害などさまざまあるが、避難場所は同じが良い。災害の種類によって避難場所が異なると、避難訓練も別々に行う必要がある。何が起きても大丈夫な避難場所をつくっておくべきだ」