2013年6月28日

強くしなやかなRHLへ 平田直東大地震研究所地震予知研究センターセンター長に聞く

南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの発生が予想され、沿岸部から遠隔地まで甚大な被害が懸念されている中、強くしなやかなRHL(レジリエント・ホーム・ランド)の実現に向けた取り組みが急務となっている。そこで、東京大学地震研究所地震予知研究センターセンター長・教授の平田直氏に想定される地震とその影響について聞いた。

--南海トラフ巨大地震の長期評価や被害想定が出ました
 「被害想定が内閣府から、また評価については文部科学省の地震調査研究本部から報告されました。地震の規模を示すM(マグニチュード)はM8-9程度、南海トラフ全域で破壊が発生した場合、最大でM9.1と予測されています。この数字は東北地方太平洋沖地震の規模と同等あるいはやや大きい数字となっており、最悪の場合、津波の高さは高知県や静岡県、島しょ部で30mを超える予想となっています。ここまで大きい地震が発生する確率は低いとしながらも、万が一発生した場合、経済的被害は220兆円、死者・不明者は32万人にも及びます。被害は首都圏を始め名古屋、大阪など日本経済の中枢を担う地域に及ぶため東日本大震災とは比べものにならないダメージを受ける可能性は否定できません」
 「また、東海、東南海、南海、それぞれ個別の領域で地震が発生した場合においても最低でM8程度とされていることから、被害が出る可能性は十分あります。津波の高さは高いところで10mを超えるので、沿岸部では危険と考えられます。津波は高さがわずか30cmでも大人が立っていることができないくらいの威力を持っていますから、警報が出たら迷わず津波避難ビルや高台に逃げて下さい」
 「南海トラフの地震だけではなく、首都直下地震も懸念されています。また、日本列島自体、4つのプレートで構成され、また活断層が縦横無尽に走っていることから、いつ、どこで地震が発生してもおかしくないと言えます」

--地震が構造物に与える影響について
 「地震が頻発する日本において、構造物の耐震・免震・制振は必須となっており、1981年の建築基準法改正以降に建設された建物については、すぐに倒壊するリスクがほとんどなくなりました。ただ、東北地方太平洋沖地震で長周期地震動がクローズアップされましたが、首都圏ばかりでなく遠い大阪においてもいくつかの高層ビルにおいて長周期地震動が原因でエレベーターが停止しました。長周期地震動は、ゆっくりとした大きな揺れが長い時間続くのが特徴で高層建築物、長大橋、石油タンクなどに影響を及ぼすといわれています。また、遠くまで伝播すると言われ、2008年に発生した中国・四川省の地震では1500㎞先でも高層ビルが揺れたと報告されています。現在、古い建物でない限り長周期地震動によって倒壊するとは考えられませんが、地震が収まっても揺れ続けるという特性がありますので、天井や家具などの落下・転倒で人的被害を与えないように対策を行う必要があります。今後は建物自体にも長周期地震動対策を行う必要があるといえるでしょう」
 「また、液状化や地盤崩壊などによって千葉県浦安市では市の85%が被災するなど大きな被害を受けたことを考えて、可能性がある土地・家屋、地下埋設物には対策を講じるべきです」
--日本は地震国ですがこれから先に考えなければならないことは
 「日本では明治以降、死者・不明者1000人以上発生した地震が12回ありました。周期的に発生するわけではなく、時間的にランダムに発生し、多いときには2、3年に一度の頻度で発生しています。東北地方太平洋沖地震が発生して以降、特に東日本では地震が起こりやすくなっていることから考えても、いつ大きな地震が発生してもおかしくない状況にあります」
 「また、先ほど話したように、日本は活断層が縦横無尽に走っています。これがいつ動くかわかりません。明日かもしれないし数十万年先かもしれません。たまたま、構造物が断層の上に建っていたら、1m動いただけでも建物は破壊されることでしょう。しかし、その周辺であれば適切な耐震対策をとってさえいれば壊れることはありません」
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 「日本は地震や火山噴火が発生し、雨がたくさん降るからこそ、狭い国土の中に平地と山地、川や湖ができました。そのため、素晴らしい景観や豊富な美味しい食べ物など、多くの自然の恵を受け取ることができるのです。自然災害は起こるものとして考え、過去の教訓をもとに技術を進歩させ、私たちが安全に暮らせる強靱な国土、社会を構築することが大切であると言えるでしょう」