2013年5月27日

法案成立でどう変わる? 防災・減災、投資計画明示を義務付け

人命保護を最優先に政治・経済、社会活動の持続可能を目的に据え、国と地方自治体のすべての計画・施策に、防災・減災と迅速な復旧・復興の取り組みを義務付ける、「防災・減災等に資する国土強靱化基本法案(国土強靱化基本法案)」が20日、国会に提出された。法案が成立すれば、国、地方自治体、地域はどう変わるのか。
 22日、日本建設躯体工事業団体連合会の総会後の懇親会に出席した、自民党の脇雅史参院国対委員長は、国土強靱化基本法と建設業界との関係についてこう言い切った。
 「『アベノミクス』の効果について皆さんの期待が高まっているのは理解できる。しかし、防災・減災、インフラ老朽化への対応は中長期的に継続して取り組まなければならない。このことをしっかり踏まえてほしい」
 経済対策の一環として前年度補正と今年度当初予算を合わせた15カ月予算によって、公共工事市場は回復傾向にあるものの、既に政府がさまざまな場面で財政規律重視姿勢を見せ始めたことに対し、今後も国土強靱化を進めるための予算を確保する必要があることを、建設業界も目先の市場回復にとらわれずに理解することが必要であることを強く訴えた。


基本法案は自民・公明法案作成プロジェクトチームで作業を進めた
◇基本計画策定を義務付け

 国土強靱化基本法案とは、防災・減災に関する政策根拠の最上位理念・方針に基づき、国、地方自治体すべての計画・政策の見直しを迫るもの。
 具体的には、政府が創設する国土強靱化推進本部が、脆弱(ぜいじゃく)性評価を実施し、あらゆる計画の指針となる「国土強靱化基本計画」を策定。同時に、都道府県・市町村に対しても、地域版基本計画である「国土強靱化地域計画」の策定を義務付ける。この2つの基本計画が、国、地方自治体のあらゆる計画の指針として見直しを求め、見直した計画に基づき施策を実施する枠組み。
 強靱化基本法案最大の特徴は、あらゆる計画と政策に影響を与える、いわゆる「アンブレラ法」となっている点だ。
 異例のアンブレラ法としたことで、防災・減災を視点にした政策の重点化・優先順位が国、地方自治体それぞれが作成する計画の中で明確になり、これまで不透明な建設市場動向が浮き彫りになる点で、建設業界にとっても経営判断しやすくなる意味は大きい。
 過去、建設市場縮小の契機となった、財政支出抑制のための公共事業バッシングと、「投資計画があるから無駄な公共事業がなくならないとの声に押され、計画そのものが過去の自民党政権時代に否定された」(脇国対委員長)ことが、公共工事市場の減少を加速させ、先行き不透明感を高めさせた。
 法案作成に携わった脇国対委員長が22日の日躯体懇親会で、当面の市場回復に浮かれることなく、国土強靱化基本法案を元に対応を求めたのは、こうした過去の経緯を踏まえたものと見られる。

◇省庁横断で順位付け

 一方、政府は国土強靱化基本法案成立前から、着々と取り組みを始めていた。既に基本法で創設を定めている、政府の国土強靱化推進本部の代わりとして、「国土強靱化の推進に関する関係府省庁連絡会議」を設置し、基本法案で政府が最初に行うことを定めた脆弱性評価について、「自然災害等に対する脆弱性評価を実施するための指針」を策定。
 さらに具体的に各省庁が防災・減災政策を重点化・優先順位を付けるために、「政策」→「事業」という従来の枠組みの間に、一定の目的を達成するために必要な施策、事業のまとまりを「プログラム」としてまとめ、「プログラム」と行政機能、住宅・都市建設といった「施策分野」を組み合わせる作業に着手するなど、法案が成立した段階で一気に取り組めるための準備が進んでいる。これは、事業単位では優先順位をつけることが難しく、施策分野とプログラムを組み合わせることで、省庁横断的に方策を政治判断によって重点化・優先順位付けするのがねらい。
 7日の経済財政諮問会議に出席した、古屋圭司国土強靱化担当相は、国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)の取り組みについて、5月下旬をめどに「国土の強靱化推進に向けた当面の対応」を公表することを明らかにした。
 国土強靱化基本法案は、先行して取り組みを開始した政府の対応を法的に裏付けるもの。そのため今秋以降、国の指針策定後、国、地方自治体で、防災・減災を視点にした投資計画が順次明らかになりそうだ。