2013年4月26日

インタビュー・国土強靭化担当大臣 古屋 圭司氏/感情論排除し強靱化を推進


【致命傷を避け/被害を最小限に/速やかに機能回復】
政府は、いま、ナショナル・レジリエンス構築を図るべく、議論を加速度的に進めている。国際的流れから見ても、レジリエンス形成は、民や官、省庁横断的に取り組むべき課題である。その重責を担う古屋圭司国土強靭化担当大臣は、「公共事業悪玉論やコンクリートから人へといった感情論は一切排除」して構築に当たるとの決意を示す。ナショナル・レジリエンスとは何か。社会資本整備の方向性、建設産業はどのような役割を果たすべきかを聞いた。




--国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)とは

 さまざまなリスクを回避するため、レジリエンス確保に向けて、いま、世界各国は真剣に取り組んでいます。日本ではリスクといえば、津波や地震などといった自然災害が中心ですが、それ以外にも、石油資源確保問題やパンデミックなどさまざまなリスクにさらされています。
 私たちが目指す国土強靭化とは、強靱性のある国、地域、社会、経済システムを構築することです。一つは、あらゆるリスクに対して、絶対、致命傷を負わせないようにすること。2つ目には被害を最小限に抑えること。3つ目には速やかに機能などを回復することがポイントとなります。
 こうしたソフト・ハード両面の対応、民や官、地方自治体などとの連携も含めて、省庁横断的に取り組むべきことを、あらかじめ決めておくことが重要です。ひいては、それがわが国の平時の競争力強化や、関連分野の技術革新を促すことにつながります。
 京都大学の藤井聡教授を座長とするナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会の議論などを踏まえて、6月までには、経済財政諮問会議に反映させていくというように、スピード感を持って取り組んでいます。
 いかによい計画、クオリティーの高い計画を立てることができるかどうかが問われています。国土強靭化にどれだけ国民のみなさんが、共鳴し、賛同できるかがかかっていますので、初代担当大臣として身の引き締まる思いです。

◆事前の減災・防災への投資

--国土強靭化に社会資本整備の果たす役割は

 2005年8月にアメリカ合衆国南東部を襲った大型のハリケーン・カトリーナによる被害総額は、緊急事態管理庁(FEMA)の調査、分析によると日本円にして約14兆円規模と最大級のものになりました。しかし、事前に防災・減災のために2200億円規模の投資を行っていれば、被害をほとんど食い止めることができたと試算されています。その大部分は公共事業、社会資本整備関係事業への投資です。
 このように、事前の減災、防災への投資が、致命傷を避けるために、より大きな効果をもたらすことは明らかです。カトリーナの事例を出すまでもなく、災害を想定した平時の公共事業がいかに重要であるかは自明の理です。
 こう指摘すると多くの国民の方々やマスコミから、すぐ公共事業拡大かとか、ばらまきかといったマイナスイメージの論調を打ち出してきます。
 しかし、先ほどお話ししましたように、私たちがいま進めようとしている国土強靭化計画とは、公共事業も含む、より包括的なものです。

--国土強靭化に向け、建設産業は何をなすべきか

 現政府、与党は、公共事業悪玉論やコンクリートから人へといった感情論は一切排します。私たちは、日本がよりしなやかで、災害に強い、防災力に優れた国づくり、地域づくりを展開するためにも、国土強靭化計画、ナショナル・レジリエンス構築を推進していきます。
 国土強靭化のためには、住宅、道路、港湾、空港などの整備、維持・修繕といった建設産業分野の取り組みが不可欠かつ大きな役割を担います。
 建設産業は、国民の生命と財産を守る産業だと認識しています。国と地域社会のインフラ整備を支える産業に携わる人としてプライドを持って仕事に邁進していただきたい。と同時に、業界の近代化、競争社会の中で、正々堂々と生きのびていくために、技術革新や経営改革、体質改善などに積極的に取り組んでいただきたい。

◆適切な社会資本メンテを

--わが国の社会資本の老朽化が目立ちますが

 国土交通大臣もメンテナンス元年とおっしゃるように、これからは社会資本のメンテナンスが、わが国の経済・社会の強靭化のために重要になります。適切なメンテナンスを行うことにより、既存施設の長寿命化が実現します。
 メンテナンス技術の発展の余地は、まだまだあります。また、どこが傷んでいるか、修復しなければいけない個所を見つけるために、新しい民間技術を駆使して、迅速かつ効率的なメンテナンスができます。
 例えば、道路のどこが陥没する可能性が高いのか、新しい民間の技術やロボット技術など科学技術を駆使すれば、修復しなければいけない個所を、より安いコストで確実に見つけ出すことができます。
 修復が必要な個所に対して、どのような修復作業をしていくのか、修復方法、修復技術を選ぶかが課題となります。
 修復のやり方一つとってもいろいろあります。新しい素材を使ってやるなどといった新しい技術、ノウハウを地元の建設業者が身につけていれば、金額的には大きくはないので、地産地消で円滑に修復作業を進めることができます。
 こうした技術を身につけていくことが重要です。技術を身につけていなければ、入札金額が低くても、大手ゼネコン、中央ゼネコンに仕事を取られてしまいます。地方の建設企業の方々も、自ら進んで技術革新をして、仕事の幅を広げていくといった姿勢が強く求められる時代となります。

◆横串の連携で技術革新

--技術革新を進めるための方策は

 技術革新をしていくためには、事業者と大学の土木、建築関係学科と横串の連携をしていくことが大切です。
 私の地元の岐阜大学では、長崎大学と共同で、いま社会基盤再生技術を担う人材育成のプログラミングに取り組んでいます。非常におもしろい取り組みです。これは、文部科学省だけでは無理です。国土交通省や経済産業省なども関係してきます。
 これは、社会基盤再生科学のリーダーを養成していくことを視野に置いた取り組みです。大学だけではなくて、建設企業に勤めている若手社員などにも参画していただき、お互いに技術と意識改革を同時並行して進めていくことが大切です。
 また、仕事をしっかり生み出し、継続性が高い産業にしていくことも重要です。
 私たちが国土強靭化計画を作って、どんどん新しい技術を取り入れて、その技術を生かした事業、プロジェクトが実行されていくことを示すことにより、次世代を担う若者に対して将来、自分が職業とすべき仕事の未来、展望、ビジョンを提示することができます。
 人材育成の意味の観点からも、新しい技術を駆使して、社会資本のリニューアル、整備を進めていくことは、極めて重大な役割を担っています。