2013年4月17日

寄稿・内閣官房国土強靱化推進室 英国のレジリエンスに向けた取り組み

英国におけるインフラレジリエンスの概念
英国、米国においては、2000年代の自然災害などによる甚大な被害を受けて、災害をもたらす外力からの防護にとどまらず、国や地域の経済社会にかかわる幅広い分野を対象にして、経済社会のシステム全体の「抵抗力」「回復力」を確保する国家の強靭化(レジリエンス)に向けた計画および体制の整備が進められてきている。ここでは、英米における強靭化の取り組みについて2回にわたって紹介する。

◇大洪水受け強靱化を推進

 2007年夏にイングランド中部において大きな被害(死者13人、建物浸水5万5000軒、最大17日間の上水道停止、24時間の停電、高速道路・鉄道の停止等)をもたらした洪水が発生したことを受けて、英国内閣府の依頼により英国が取り組むべき課題についての総合的な報告書(『ピット報告書(The Pitt Review)』が作成された。この報告書では、政府および民間の洪水対策、リスク対策について、25年先を見越した長期的な洪水対策及び法整備、重要インフラの脆弱性とリスクの把握と対応、公益事業者などの事業継続計画(BCP)の策定と実効性の定期的な確認などを含む92の提言がなされた。 

◇重要インフラ・プログラム

 ピット報告書を受けて英国政府内で重要インフラ保護の必要性に対する認識が高まり、重大な影響を及ぼす可能性がある自然災害(特に洪水)などに対して、重要インフラの脆弱性分析および対策の実施によりリスクを軽減すること、分野横断的に重要インフラのレジリエンス向上策を共有する枠組を準備・提供すること、緊急事態の影響を各分野および業界で最小化し、迅速に対応するための能力を向上すること、緊急事態への準備・対応・復旧に関する地方レベルでの情報共有を促進することを目的として、「重要インフラ・レジリエンス・プログラム」が始められ、具体的な作業フレームとして「戦略的枠組及び基本方針」が公表されている。 
 そのプログラムでは、国家インフラを「英国内での日常生活に必要不可欠、または国家として社会的・経済的に継続するために必要な施設、システム、拠点、ネットワーク」と定義し、通信、警察・消防、エネルギー、金融、食料、政府機能、医療、交通・物流、上下水道(ダム含む)の9分野において、当該インフラが停止した場合に生命、経済、重要サービスのどれか一つでも「多くの地方や数十万人に影響が生じる」場合は重要インフラとしている。

◇耐久力、対応能力で分野別計画

 また、短期的には、洪水に対する脆弱な重要インフラの特定及び被害防止策の実施や「分野別レジリエンス計画」(Sector Resilience Plan for Critical Infrastructure)の作成などを目標にするとともに、中長期的には、すべての重要インフラの緊急事態対応能力の向上、既存の規定・規則類の見直し、必要な対策・政策の立案などとともに、「国家レジリエンス計画」(National Resilience Plans)を作成することとしている。それを踏まえ、現状の重要インフラの洪水への耐久力および対応能力について明確にした「分野別レジリエンス計画(洪水向け)」が10年に公表された。今後、洪水以外の自然災害を対象にした分野別レジリエンス計画と、重要インフラに関して、すべての災害に対する長期的なレジリエンス向上及び維持を目的として国家レジリエンス計画を作成する予定である。
(内閣官房国土強靱化推進室)