2013年4月1日

「何があってもつぶれない国」 ナショナル・レジリエンス懇座長の藤井聡氏に聞く


 世界では、あらゆる危機に対応し、迅速に回復するという有事対応の考え方として「レジリエンス」という言葉が一般化しつつある。わが国では、内閣官房が「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」で脆(ぜい)弱な国土から強靱性を備えた国土への転換に向けた議論を開始、「レジリエンス」な国づくりに向けた議論が始まっている。懇談会の座長の藤井聡内閣官房参与に、基本的な考え方やレジリエンスな国づくりのイメージを聞いた。

--レジリエンスとは何か

 「レジリエンスの訳語が『強靱性』で、強靱性は耐ショック性と回復力という合成の概念になる。耐ショック性は、致命傷を回避して被害を最小限化することを意味し、回復力は、受けた被害を迅速に直すこと。ショックとは、あらゆるものを指し、特定の津波や特定の地震だけを指しているのではない。あらゆるものに対する耐ショック性と回復力が『レジリエンス』だろう。想定する外力に対応する『防災』の概念とは少し違う。ナショナル・レジリエンスとは、日本国家の強靱性をつくるという意味になる」

--懇談会で議論していることと、巨大地震など特定の災害に対する措置方法を考えることとの違いは

 「理念上は、特定の地震など個別の想定外力に耐えるだけを考えるのではなく、何があってもつぶれない国をつくるという目標を掲げている。ナショナル・レジリエンスの検討範囲は、既存の防災基本計画や国土形成計画、エネルギー基本計画などすべてを含んでおり、各計画に傘を掛けるように影響を与える(=図)。既存の防災計画は、個別の災害の事後対応や緊急対応が重視されている面があるだろう。一方、ほかの既存の計画体系・政策体系が有事に対応できるものになっているか、という点は議論の余地がある。防災計画と日本の国土軸などの国家の体質そのものが、より一層、関係性を持つようにする。既存計画が有事に対応できないものであるならば、レジリエンスの概念を含んだ計画を議論する必要がある」

--懇談会では、次回会合(4月3日)で脆弱性評価の指針を提示することになっているが、脆弱性評価では何をするのか

 「特定のリスクが発生した時に、『起こしてはいけないこと』が各分野にあるだろう。懇談会で出た事例で言えば、エネルギー分野について、地震によって石油備蓄施設の破壊が危惧されており、それが『起こしてはいけない』ことに当たるだろう。起こしてはいけない事態と、起こさないための対策を各省庁と各地域に聞く。さらに、懇談会側が提示する『特定のリスク』のほかに、起こしてはいけないことを起こすリスクが何かあるかも聞く。各省庁・各地域から挙げられたことを単に並列するのではなく、国家として対応すべきことなど、全体の視点での評価も必要だ」
 「脆弱性評価は、例えば、人が身体の悪いところを調べるために、人間ドックに入り、病気になりそうなところを改善するように、日本全体を医療機器のMRI(磁気共鳴画像装置)に入れると言える」

--中央防災会議が発表した南海トラフ巨大地震の被害想定との関係性は

 「脆弱性評価を各省庁・各地域に求める際に提示する『特定のリスク』は次回会合で固める予定だが、そのリスクの一つに南海トラフ巨大地震が入る可能性は高い。各省庁・各地域や懇談会が脆弱性を評価する際に、中央防災会議の被害想定は大きな参考になるだろう」
--懇談会では、脆弱性評価を実施するリスクを特定する前に、すべてのリスクを洗い出し、全体のビジョンをまとめ、リスクの中から『今回はこのリスクに対する脆弱性を評価する』という手順で進めてはという提案もあったが
 「2014年度予算概算要求の方向性を示すことになると思われる『骨太方針』が、年央にも取りまとめられる見通しだ。そこに、まず懇談会の議論の内容を参考として提供する。そのための短期的な議論がある。あわせて、全体のビジョンといった長期的な議論があり、短期と長期の議論は連携する。どのように連携するかは、今後の議論になる」