2013年2月27日

津波災害に「後方支援拠点」の整備を! 本田敏秋遠野市長に聞く

岩手県の消防防災課長時代に、県内における自然災害で最も悲惨なのが津波だと知った。そして、住民の生命・財産を守るという重要な事業は市町村という現場が持っているということを痛切に感じた。一方で、遠野市長就任後、1市だけの完結型で行政を行うことは難しく、「足らざるところを補い、特性を生かし合う」という水平連携の中で、お互いに切磋琢磨することが市町村運営の1つの手法だと思っていた。こうした中で2007年にまとめたのが「地震・津波災害における後方支援拠点施設整備」構想だ。


稲荷下物資センター配送の様子
後方支援拠点を構想

 当市は、盛岡・花巻・北上・奥州市などの内陸部と、宮古・釜石・大船渡・陸前高田市などの沿岸部の都市のほぼ中心に位置しており、遠野を核にした広域経済圏が形成されている。こうしたことから、危機管理として、沿岸部に津波が来たら内陸のエネルギーをいったん遠野に集め、救援・救助・捜索の部隊が出ていける拠点を置くべきだと考えた。遠野には明治三陸地震の大津波の時にも後方支援した歴史がある。過去を遡れば果たすべき役割が見えてくる。
費用対効果で計れない
 構想策定には、高規格道路の整備推進の側面もある。道路を確保することで災害時には被災者を搬送し、救援物資も届けられる。公共交通網の乏しい地方においては、まさに命をつなぎ、生活を守るために、どうしても道路は必要であり、費用対効果という価値観だけでは計れない。それを訴えるためにもこうした構想が必要だった。

◇基礎自治体が独自判断

 災害救助法や災害対策基本法は、被災市町村の要請を受けて国や県が動く仕組みになっているが、今回の震災では要請できる状況になかった。その中で、他の基礎自治体が独自の判断で動き、50もの自治体が後方支援の構想を持っていた遠野に救援物資や人を派遣してくれた。権限も財源も法律上の責任も明確ではない基礎自治体の首長が、被災地を助けるため自らの判断で支援したことが今回の大きな特徴だったと思う。
 今後、首都圏や東海・東南海で震災が起こり得る中、後方支援の考え方を法的に位置付けるべきだ。私も被災地に職員を差し向けたが、万が一犠牲が出ていれば責任を取るしかなく、かき集めた約4000万円相当の救援物資の費用も、もし「勝手にやったことだから出せない」と言われたらそれまでだった。

◇平常時の運用が原因

 国・県は、命と向き合っている市町村という現場のノウハウと資源をもっと信頼してほしい。現場で目の前のことを即断しなければならない。それに対し、国が大局的立場で了承しても県を通さなければ進められず、その手順・手続きに時間が掛かる。未曾有の非常時に平常時の運用をしていることが復興にスピード感が足りない原因だ。今後のために検証し、責任・権限・財源などの心配をせずに進められる仕組みづくりを急ぐべきだ。
◇建設業の貢献、PR必要
 災害発生後、徳山日出男東北地方整備局長のリーダーシップで直ちに道路啓開が展開された。遠野の災害対策本部に建設業者の出入りがないと思っていたら、彼らは既に現場に入っていた。素早い対応により避難所への物資搬送が確保され、多くの命が救われた。こうした貢献をもっとPRしていかなければならない。

◇老朽施設の補強・更新急務

 いま、あらゆる社会基盤が全国的に更新の時期にある。「国土強靭化」という言葉と何兆円という数字が独り歩きし、「昔に戻るのか」という批判も上がっているが、かつての公共事業ありきではない。必要な予算をしっかり確保し、老朽化したインフラの補強・更新を急がなければならない。そのことをもっと丁寧に国民に説明すれば理解を得られると思う。その担い手として、しっかりした技術とノウハウを持つ建設業や公益法人に期待している。
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